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飲みすぎる? それでも飲みたい! 5月、窓を開け放して富田通信を書いていても寒さを感じない季節になりました。中庭のボケは真っ赤な花を身にまとい、池のほとりにおずおずと黄色い花を咲かせ始めたヤマブキはそよ風に優しく揺れています。 ゴールデンウイークのざわめきが過ぎ去った静かで柔らかなこの季節、心が広がっていくようでいいですねぇ。 とろこで、ゴールデンウイークといえば、里帰りやら、旅行やら、あるいは地域の行事なんかで酒を飲む機会が多かったんじゃありませんか。かく言う私も消防団の行事で、7時間もの間、飲み続けました。もう歳で、無理も利かないことだし、早めに切り上げようとは、いつも思ってはいるんですが、仲間と飲んでいるとすっかり忘れてしまうんですよ、これが・・・。 そこで今回の富田通信は、『酒飲みを励ます本』志賀貢著・三笠書房より、このことについて書いてみましょう。 飲みすぎる? それでも飲みたい! 女性をくどきそこねて、「あ〜あ、こんなに飲むつもりなかったのに。オレは意志が弱いのかなあ」と、すっかり自信をなくしてしまう人のなんと多いことか・・・。それも、こんなことを考える人は、だいたい、飲んべえ、いわゆる、いける人なのである。 酒を少ししかたしなまない人は、たまたまいっしょに飲んだ相手が大酒のみで、その相手をしなくてはならないために無理矢理飲ませられたということが多く、「知らず知らずのうちに」飲みすぎたということはまずない。 「意志が弱いのかなあ」と自信をなくすような人にかぎって、知らず知らずのうちに飲みすぎているのである。たとえば、「きょうは三杯でやめておこう」とか「絶対に六杯以上飲まないぞ」と思っても、それ以上飲んでしまうのである。 これは、最初に「六杯以上飲まないぞ」と決めた人間と、六杯まで飲んだ人間とが、時間がたつと、同じ人間ではなくなっているからなのである。簡単に言えば、しらふだった人間が、酔ってしまっている。酔った人間は、それこそ、「矢でも鉄砲でも持ってこい!」と上機嫌で、気も大きくなる。 酔っていない時には自制する機能が働いても、酔ってしまってからでは、最初の約束など、どこかへ吹っとんでしまっている。 ところで、お経など取り出して、しんきくさくて恐縮だが、『法華経』にはこんな意味の文句がある。 初則人呑酒、次則酒呑酒、後則酒呑人 はじめは酒が飲みたくて酒を飲むが、ある程度飲み進むと、飲んだ酒のためにさらに酒がのみたくなり、最後には酒のために人が酔ってしまい乱れる、という意味である。 また、茶道家として名高い千利休もこんな言葉を残している。「一杯は人が酒を飲み、二杯は酒が酒を飲み、三杯は酒が人を飲む」と。全く同じ意味である。 飲んべえの先人たちも、皆、悩みながら飲み続けてきたわけである。しかし、飲む絶対量でいうと、日本人というのは思ったほど飲んべえではない。フランス、イタリアあたりを横綱とすると、小結でさえ疑わしいほどなのである。 さらに、横綱、大関クラスの国を見ると、いわゆる先進諸国、文化が進んでいる国である。酒を飲めば飲むほど、文化が進むわけではないのだが、文化のレベルと飲酒量とは多少の因果関係があるのかもしれない。 酒のためには、幸いにして、日本という国はじっくり味わうには、まことに都合がよくできている。 春夏秋冬という豊かな気候の変化があって、春は桜や青葉、夏は暑気払い、秋の月見、冬の雪見と、酒を飲む理由にはこと欠かない。心で飲むのに、ピッタリなのである。 酒宴の名称も優雅で、「花見酒」なんていうのは序の口だ。「木の芽酒」「春雨酒」「紅葉酒」・・・日本人は粋なのである。 「死んで千杯よりも生前の一杯」とも言うではありませんか。飲みすぎに心を配りながらも、一杯そして一杯、また一杯と、味わって酒を飲もうではありませんか。 ヤンヤ、ヤンヤ、さすがに『酒飲みを励ます本』だけあって、いいことを言いますねぇ。そういえば4月上旬、「花見酒」に先だって楽しい「出会い酒」を飲みました。関西の医学生Iさんが、医師国家試験合格発表までの合間を利用した旅行の途中で寄ってくれたんです。彼女とは富田通信が取り持つ縁で、吟醸酒が大好きとのことで、すっかり意気投合してしまいました。初対面にもかかわらず、夜遅くまで様々な吟醸酒を飲み続け、夢を語り合いました。若さというものは何にもましていいですね。後日、試験に合格したとの連絡を受けました。吟醸酒と彼女の新たな旅立ちに乾杯! |
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○富田通信を100号ずつまとめて本にしようという話が出てから、もう4年。ここまで延びてしまったのは、ひとえに私のせいです。一番の理由はもちろん私の金欠病にあるのですが、一冊の本になって手元に残ることへの気恥ずかしさが、それを後押ししたのです。富田通信は月に一度の紙切れ一枚。内容が面白くてもつまらなくても、読んだら捨ててもらえる。この読み捨てられるという気楽さがいままで書き続けることができた理由のひとつだったのです。 でも、本にすると公言してしまったし、200号が来年に迫っている・・・。本にしたらと勧めてくれた株式会社ソーゴーの畏友、山市くんに、腹をくくって原稿を渡しました。出版予定は6月下旬です。価格は費用を部数800冊で割って、だいたい500円くらいになりそうです。もちろん原価でご希望の方にお分けします。もし、欲しいという奇特な方がありましたら、富田まで申し込んでください。予約大歓迎です。 |
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