第260号(2009.5.10)
端午の節句とあやめ酒
 ゴールデンウィークが始まったあたりから晴れの日が続き、5月5日には最高気温が27度にまで達しました。
 桜の花が咲いて春の訪れを感じていたのがついこの間のことだと思っていたのに、中庭ではもう山吹の花や真っ赤なボケの花が競うように咲いていて、春真っ盛りです。
 さて、5月といえば端午の節句ですよね。そこで今回の富田通信は端午の節句とそのときに飲む「あやめ酒」について書いてみましょう。

端午の節句の由来
 5月5日の端午の節句はいつ頃から始まったのだろうか思ってインターネットで調べていたら、昔、学校で習って非常に感銘を受けた「漁父」の屈原(くつげん)にあると知って驚きました。
 屈原(紀元前343頃〜紀元前278頃)は楚の国の倫理観の高い政治家でしたが陰謀によって失脚し国を追われました。「漁父」はその頃の屈原を書いた詩です。知ってる方も多いかとは思いますが紹介します。

 
漁 父  (『陶淵明伝』牟田哲二著より)
屈原既に放逐せられて 江潭に遊び 沢畔に行吟す 顔色憔悴し 形容枯槁せり
漁父見て之に問うて曰く
「子は三閭大夫にあらずや 何が故にここに至る」と
屈原曰く
「世人皆濁れり 我れ独りすめり 衆人皆酔い 我れ独り醒めたり これを以て放逐せられたり」と
漁父曰く
「聖人は万物に凝滞せずして世と推し移る。
世みな濁らば 何ぞその泥をにごらし その波をあげざる
衆人皆酔わば 何ぞその糟をくらい その汁をすすらざる
なにが故に深く思い 高くあがり 自から放逐せらるるをなすや」
屈原曰く
「われこれを聞く 新たに沐(かみあろう)ものは必ず冠を爪はじき
新たに浴(ゆあみ)するものは必ず衣を振うと。
いずくんぞ身の清き察察たるを以て 物の汚れて文文たるを受くるものあらんや。
むしろ湘流に赴きて 江魚の腹中に葬られん。
いずくんぞよく皓皓の白きを以て 世俗の塵埃を蒙らんや」と
漁父莞爾として笑い、楫音をひびかせて去る。
すなはち歌いて曰く
「滄浪の水すまば 以てわが冠の纓(ひも)を洗うべし
滄浪の水濁らば 以てわが足を洗うべし」と。
遂に去りてまたともに言わず。

 なんとも心に刺さる重い言葉ですね。結局、屈原はその後、汨羅(べきら)という川に身を投げてしまうのですが、楚の人々は彼の死を悼んで小舟で川へこぎ出し太鼓を打ってその音で魚を追い払い、また粽(ちまき)を川へ投げ込んで屈原の遺体が魚で食べられることの無いようにしました。
 5月5日の屈原の命日に毎年供養のためにこのことが行なわれ、やがて国の安泰を祈願する風習になっていき、そして病気や災いを除く風習へと変わり、これが後の端午の節句になったとのことです。

あやめ酒
 5月5日の端午の節句には菖蒲(しょうぶ)を軒にさしたり、お風呂に入れて菖蒲湯にする風習があります。
 これは菖蒲が、早春にいち早く芽を出すことや、清々しい香りがあること、葉が鋭い剣先のような形をしていることなどから、魔を退ける力を持つ霊草と考えられていたためです。
 蜀山人の書いた『千とせの門』に「長命のいととしきけば薬玉のあやめの酒の百薬の長」という句がありますが、菖蒲の根を薄くスライスし30分ほど酒に浸したものが「あやめ酒」で、これを端午の節句に飲めば災いや蛇や蟲の毒を避けることができるといわれています。
 なお、あやめ酒とはいうものの、昔、菖蒲のことをあやめと言っていたために菖蒲酒と書いてあやめ酒と言うのであって、けっして花のきれいなアヤメの根を浸した酒ではありませんのでご注意のほどを。
 蛇足ながら、葉がよく似ているので間違えやすいのですが、菖蒲湯やあやめ酒に入れる菖蒲はサトイモ科、アヤメや花菖蒲はアヤメ科で、植物学的には全く別な種類です。



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・必ず冷蔵庫で保管してください。
・開封の際は噴き出す恐れがありますので、冷たいまま、ビンを振らずに、王冠を少し開けたり締めたりを繰り返し、ビン内部のガスを十分抜いてから開封してください。
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